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脱アカデミアへの道~応募から採用までの流れ~

アカデミア→民間の転職活動の流れ

民間の転職活動もアカデミアの転職活動もやることはあまり変わりません.具体的には以下のような流れで行います.

求人を探す
書類(履歴書、職務経歴書)の作成
求人への応募
書類選考
面接(2~3回程度)
採用 or 不採用
退職手続き・入社手続き

大まかには、一つの企業の応募から内定獲得まで1~2ヶ月程度かかります.新卒の就活とは違い、内定承諾の期間は一週間程度しかありません.いくつかの職の中から選ぶには、応募や面接を同時並行で行い、1週間の間に内定を集中させるように戦略を立てなければなりません.

以下では各ステップで具体的にどのようなことを行うかを見ていきます.

求人を探す

アカデミアの公募であれば、大学・研究所の公式HPにある求人から直接応募か、JREC-INなどのポータルサイトで求人を探して応募します.民間でもこの形式は変わらず、企業HPや求職サイトで募集をしている場合があります.さらに、転職エージェントが独自の求人を持っている場合もあります.

そもそも適した求人自体が少ないアカデミアと比べると、民間の求人数は桁外れです.企業の数、その中の職種の数、その中の求人の数が多すぎるため、求人を探すこと自体が大変です.その分、自分の希望にあった職種の募集はどこかしらで行われているはずですが、年収や勤務地、職務内容など全ての条件が完璧な求人があることは稀だと思いますので、譲れない条件の優先順位をつけておくのが必須です.

エージェントからも求人の紹介はされますが、自身の専門に完璧に合致した求人が紹介されることは期待しないほうが良いです.例えば関東勤務を希望しているのに、平気で九州の求人を紹介されます.

そもそもエージェントにあなたの専門分野を理解しろという方が難しいので、エージェントの紹介求人は参考にしつつも、求人は自力で探して決めた方が良いと思います.

書類の作成

転職活動で用意する書類は、企業によって多少違うかもしれませんが、二種類あります.履歴書職務経歴書です.アカデミアの就活においても同様の書類を用意していると思いますので、そこまで大きな問題はないでしょう.

履歴書の作成はアカデミアの場合と変わりません.リクルートやDoDaなどのサイトの凡例を参考に、自身の経歴を記入していきます.様式はエージェントごとに専用のものがありますが、直接応募では好きなものを選べます.デザインに多少の差こそあれ、基本的に書く内容は変わりません.

履歴書をテンプレートで簡単作成! 書き方やサンプルもご紹介 | リクルートエージェント
履歴書テンプレート~ダウンロードしてすぐに使える~ |転職ならdoda(デューダ)

学歴・職歴欄は問題ないでしょう.時系列順に出身校や勤務先を書きます.アカデミア出身者に限った要素といえば、学振(日本学術振興会特別研究員)の取り扱いがあります.就業経験に含めるかは人によりますが、書いておいても問題ないと思います.研究職であれば博士課程出身の人もある程度いるため、評価の対象になると思います.

職務経歴書については注意が必要です.転職エージェント各社のテンプレートに従って書けば良いと思いますが、書く内容は職務経歴の要約、各職務のポジションと職務内容、資格、自己PRなどです.ここでは、(大学研究者ではなく)企業の担当者が見ることを意識して記述する必要があります.

 職務経歴書テンプレート(Word・Excel)のダウンロードと選び方 |転職ならdoda(デューダ)

例えば、学振や科研費のノリで職務経歴書を書くことは辞めておきましょう.それらの書類ではいかに「自分の研究にどういう意義があって素晴らしいか」を書くわけですが(異論は認める)、そうした内容は企業の就活ではあまり価値がありません.発表した論文のインパクトファクターを誇るのもあまり意味がありません.

大事なのは「あなた」にどういう実績や価値があって、その経験を活かして「企業」でどういう活躍をできるかです.研究の価値ではありません.あなたの価値を主張する必要があります.少なくとも学振や科研費の申請書を使い回すのは止めましょう.

ここはあなたがどんな活躍をしてきて、それを次の職場でどのように活かせるかを表現する場です.決して、過去の研究の斬新さやインパクトを伝える場ではありません.

しかし、自分には研究しか誇れるものがないし…と思うのは早計です.気づいていないだけで、アカデミアで過ごしたあなたには民間の転職活動でもアピールできることが多くあるはずです.アカデミアでは当たり前であっても、民間ではなかなか身に付けられないスキルがありますし、それはあなたの武器になります.

例えば、学生への教育指導はアカデミアの特権です.新人への教育や技術伝承はどこの企業でも当たり前に必要なものであり、教育の経験は武器になり得ます.また、英語力もアカデミアの人材であれば身につけていることでしょう.英語での論文の執筆、英語論文のチェック、国際学会での発表、外国人研究者との打ち合わせなどはアカデミアでは当たり前ですが、民間では必ずしも当たり前のスキルではありません.そもそも自分で研究テーマを立ち上げて、共同研究者と協力して論文を残すことは非凡なスキルではありません.

また、論文という成果は強力な武器です.アカデミアにいると盲点ですが、誰でも確認できて目に見える成果というのは貴重な存在です.例えば、いかに営業成績が良かったり会社のシステムを改善したとしても、もちろんそれらの成果は社外秘ですので客観的に確かめる手段はありません.本当のことを言っているか、面接で確かめるにも限界があります.一方、論文の名前は永遠に残るため、誰に対しても成果の証明になります.

作成した書類はエージェントに添削してもらえますが、あまり期待はしない方が良いです.エージェントは多くの求職者を抱えており、一人の書類をしっかりと添削する余裕はありませんし、する意義もありません.致命的な誤字脱字くらいは見てくれるかもしれませんが、その程度です.

自分自身でしっかりと作成を行い、確認を行いましょう.可能であれば、知人に書類を見てもらってフィードバックをもらうのが有効です.

応募と書類選考

転職エージェント経由の応募の場合は、履歴書と職務経歴書をエージェントに渡し、応募したい求人を伝えて応募してもらいます.ここは特に難しいことはありません.

書類選考の通過率ですが、これはどの程度自身の経験にあう求人に応募しているかによります.当然ながら未経験の職種は落とされやすいですし、経験を活かせる職種であれば通過率は上がります.いわゆる総合エージェントでは、通過率の平均は10~20%程度であると言われますが、平均と比較することにあまり意味はないでしょう.

私個人の経験で言えば、6~7割程度の通過率でしたが、これは自分の経験を活かせそうな求人を選んで応募していたからだと思います.

転職エージェントからは、可能な限り多くの求人に応募するように言われますが、これは平均の通過率から逆算しているためです.自分が本当に就職したい求人であれば別ですが、そうでないならあまり多くの求人に同時に応募することはおすすめできません.例えば、10の求人の書類が通過した場合、10の企業の面接を同時にこなさなければなりません.新卒の就活ではこれぐらい普通ですが、普段の職務をこなしながらこれだけの面接を行う余裕があるでしょうか.

個人的には、働きながら同時並行で行える求人は3~5が限界だと思います.それ以上になると企業研究を行う時間や志望動機を考える時間がなくなり、一つ一つの面接の合格率が落ちます.それならば、求人を厳選して合格率を高めたほうが建設的です.

もちろん、同時並行の数が減れば全落ちのリスクも高まるわけですが、そのときはその時です.再度求人を厳選して応募をやり直しましょう.そうできるようにするためにも、十分に余裕を持って転職活動を行うことが重要です.間違っても任期切れの直前に転職活動を行ってはいけません

書類選考に通るまでの時間ですが、これは求人によるとしか言えません.しかし、感覚的に言えば合格であれば素早く、不合格であれば時間がかかる印象です.企業側としても、目ぼしい候補者は早めに確保したいというのが本音であると思います.

私個人の経験で言っても、合格の場合は3日以内に連絡が来ましたし、2週間位待たされた求人は案の定不合格でした.

面接対策(~1次面接)

晴れて書類が通過すれば面接に進めます.平日の日中に行われるので、予定を空けておく必要があります.昨今はオンラインの面接が多いですが、最終面接のみ現地で対面で行われる場合もあります.

企業や求人ごとに面接の回数は異なります.2回または3回の事が多く、1回の場合もあります.比較的規模の小さな中小企業やベンチャーなどは1回のことが多くあるようです.私が応募したところは2回の事が多かったです.

1回目の面接は、人事の方や所属部署の直属の上司になると思われる方が現れました.職務経歴、転職理由、志望動機はどの面接でも必ず聞かれました.ある程度の質問内容はパターン化されていると思いますので、ネットで想定質問を調べて準備しておくのが良いと思います.

面接で聞かれる「想定質問集」25選
面接で必ず聞かれる5つの質問 ~回答例文と対策~ |転職ならdoda(デューダ)

志望動機は企業ごとに作る必要がありますが、他の質問は多くの企業で使い回せるので一回全てメモにしてまとめておけば問題ありません.アカデミアの面接で問われるような、具体的な研究内容や意義についてはほとんど聞かれず、仕事の進め方や周りとの付き合い方などマインドに関しての質問が多くありました.研究職においてもそれは同様です.

具体的にどのような質問がされるのか or されたのかは別ページで解説します.

面接対策(~最終面接)

3回面接がある場合は、1回目が人事、2回目が部門の担当者の方による面接となる場合が多いようです.

1次面接(2次面接)を突破すれば最終面接に進めます.最終だから顔合わせみたいなものだと思っていたら地獄に落ちます転職の最終面接は普通に落とされます.色々な情報を見てみたところ、最終面接の通過率は半分程度であるようです.

最終面接では役員や社長などの特に偉い人が出てきます.求職者のスキルや能力についてはそれまでの面接で問われてパスしていることが多いので、むしろ「会社に馴染んで長く働いてくれるか」などの精神的なところを見られる傾向があるとのことです.

最後の壁であり、Noと言われたらNoです.普通に落とされますし、私も普通に落とされました.まあ、落ちる面接は面接の最中の向こうの反応でなんとなく分かりますよね.雰囲気が合わなかったのか、他にもっと良い候補がいたのか、なんとなく気に食わなかったのかは分かりませんが、気にしても仕方ありません.切り替えましょう.

面接の結果は数日~一週間程度で分かり、エージェントを利用している場合はエージェント経由で知ることができます.直接応募の場合なかなか落ちた理由を問い合わせることは難しいですが、エージェントは合格理由・不合格理由のフィードバックを尋ねてくれるのでその点では有利です.

面接の結果は基本的に、合格の場合は連絡が早いです.私も一次面接が合格の場合は翌日に結果が届きましたし、一週間程度待たされた場合は大体不合格でした.週明けでも結果が来なかった場合はさっさと切り替えたほうが無難です.(当然例外はあり、一週間後に合格した場合もあります)

面接総括

全体を通して、あまり奇をてらった質問は聞かれませんでした.また、技術やスキル面を深掘りされることもあまりありませんでした.一次面接では技術的な質問があっても、最終面接ではほぼありませんでした.むしろ、どのように考えて仕事をしているか、どのようなことを考えて生きているかなどメンタル・パーソナリティ面を問われる質問が圧倒的に多かったです.

おそらく、技術的な面は書類である程度選考ができていて、面接では「一緒に働いていけるか」「長く務めてくれるか」を重視しているように思います.

適性検査(SPIなど)

書類が合格したタイミングか一次面接を通過した段階で、企業によっては適正検査が行われます.いわゆるSPIというやつです.正直、SPIは新卒の就活生が行うもので転職者には関係ないとずっと思ってましたが、そんなことはないようです.当然、就活生と同じように対策を行う必要があります.

SPIでは大きく3種類の問題が出題されます.言語問題(語彙力や文章の読解力を問う問題)や非言語問題(簡単な算数や数学の問題)、適性検査(性格的なところを問うアンケートのようなもの)があります.SPIの対策用サイトはいくらでもあるのでここで書くことはあまりありません.

正直、アカデミア出身の方であれば大体の問題は苦労せずに解けると思いますが、対策はしておいたほうが良いです.問題はそれほど難しくないですが、時間制限はそれなりにきついです.とにかく素早く正確に解く必要があります.性格検査は正直どう答えるのが正解なのかは分かりませんが、選択した内容は後の面接の受け答えの内容とも整合するように一貫性をもって回答するのがベターかと思います、

SPIの成績で不合格になることはあまり無いようですが、それでも評価の対象にはなるでしょう.あまりに無様な結果とならないようにしっかりと対策しておきましょう.

内定後

内定をとれれば一安心です.やっと肩の力が抜けます.

いくつかの企業の条件を見比べて決めたいところですが、内定をキープできるのは長くても一週間程度です.すなわち、本命の最終面接を一週間後に控えていても、そちらの結果を待ってから内定受諾を決めることはできません.リミットが過ぎれば当然ながらお流れです.

複数の内定先の条件を吟味するためには、最終面接のタイミングをある程度揃える必要があります.ある程度はエージェント側で調整してくれますが、内定の出るタイミングは企業次第なのでうまいことやらないと地獄を見ます.

内定の知らせの後、何日かすると労働条件の通知書が届きます.なんと!アカデミアとは異なり、給与や労働条件は内定受諾前に必ず提示されます.これに関してはアカデミアの慣習が狂ってるのですが、民間では労働条件を確認してから安心して内定先を決められます.後悔のないようにしっかりと考えましょう.

次回は、実際に面接でどのような質問がされるのかを見ていきます.