はじめよう固体の科学

電池、磁石、半導体など固体にまつわる話をします

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2022-01-01から1年間の記事一覧

研究室の選び方を本気で考える(6):研究室を訪問した際にチェックすべきこと

研究室配属の時期には、研究室ごとに訪問日程が組まれることが多く、好きな研究室を訪問できます.そこで話を聞いて志望度を増したり減らしたりしながら最終的に志望する研究室を選びます.研究室見学の時間はせいぜい1時間なので、学生と歓談しているとあ…

研究室の選び方を本気で考える(5):研究室の予算から分かること

研究室の予算状況は、研究室生活のQOLを決めます.配属先の研究室の予算規模をどうやって調べればよいでしょうか.お金の収支を詳らかにしている研究室は少ないですが、ネット上で手がかりを得ることはできます.少なくとも、貧乏研究室か金持ち研究室である…

研究室の選び方を本気で考える(4):HPの学会発表や受賞のリストから分かること

論文発表や学会発表の他にも、研究室の業績となる事項は様々あります.特許の取得、研究室構成員の受賞、プレスリリース、外部資金の獲得、報道、寄稿などが挙げられます.研究室HPを見れば、これらの業績の内容が書かれているケースが多く、後悔しない研究…

研究室の選び方を本気で考える(3):研究室の論文リストから分かること

研究室に配属した後、自分はどの程度の業績を挙げられるでしょうか.その人次第としか言いようがありませんが、これまでのアウトプットが優れた研究室ほど、優れた成果を挙げられる可能性が高まります.志望高校を選ぶ際に、大学などの進路実績を見るのと同…

研究室の選び方を本気で考える(2):研究室のHPから分かること

研究室選びをする際に、簡単に利用できる情報源は、研究室のHPです.大抵の研究室は自身のHPを公開しています.いつでもアクセスできますし、ボスの好みのデザイン、アウトプットの量、その他にも様々な情報が分かります.

研究室の選び方を本気で考える(1):研究室の情報を集めよう

せっかく研究室に所属するのであれば、しっかり成長できる場所に入りたいですよね.そのためには、事前に情報をしっかり調べて、後悔のない研究室選びをする必要があります.興味のない研究内容に時間を費やしたり、ブラック研究室に入って精神的に疲弊する…

金属ガラス:周期構造を持たない金属材料の秘密

ドロドロの溶融状態から超急冷することで得られるアモルファス金属は、既存の結晶性金属よりも強度に優れ靭やかであり、錆びにくく、磁気特性に優れるという大きな特徴がありました.さらに、加工性に優れる金属ガラスの発見により応用化が一気に進み、様々…

ラーベス相:単純な組成と多様な物性

Lavesは様々な金属間化合物の結晶学的関連性に関する重要な知見を発表しました.発見から100年近くが経ち、ラーベス相に属する物質は非常に多く発見され、優れた水素吸蔵特性、耐摩耗性、磁歪、磁気熱量効果を示すものがあり、実際に製品化されている材料も…

パイライト構造とマーカサイト構造:陰イオンの”二量体”を持つ結晶構造

パイライトとマーカサイトは、いずれも鉄の硫化物(FeS2)からなる鉱物です.パイライトは黄鉄鉱、マーカサイトは白鉄鉱とも呼ばれます.パイライト構造およびマーカサイト構造はいずれもS2ダイマーが構造中に含まれるという共通点があります.

貴ガスがイオンになる?:驚きの価数を示す物質たち

元素によってとりうる価数は異なり、大多数の化合物中では元素の価数は特定の値になります.しかし、特殊な状況を作り出せば元素の特性も大きく変わります.環境を整えれば、アルカリ金属だってアニオンになるし、貴ガスだってイオンを形成するのです.

発光ダイオード(LED):人類の到達した第四の光源

第四の明かりである「発光ダイオード(LED)」が普及したのは最近になってからのような印象ですが、その歴史は意外に古く、20世紀前半にはLEDの元型が発明されています.LEDは寿命が長く、低消費電力で、耐衝撃性に優れ、大量生産に適しているという多彩なメ…

ダイオード:電子の「一方通行」を実現する

エレクトロニクスでは様々な機能のある微小なパーツを組み合わせて回路を構成します.ダイオードは代表的な電子素子であり整流作用(電流を一方向にしか流さない性質)を示します.ダイオードは、交流を直流に変換するコンバータ、電流の逆流防止、過電圧か…

ホイスラー合金:何にでもなれる万能合金材料

ホイスラー合金と呼ばれる物質は、今日では1000種類を超える組成が報告されています.磁性材料、電子材料、熱電材料として注目される物質も多く、実用化もされています.多様な物性は価電子数という単純な概念によって整理されます.

パイロクロア構造:フラストレーションの宝庫

パイロクロア構造は、化学・物理の両分野で頻繁に顔を出します.特に磁性体としての研究が顕著で、現在もなお物性物理の中心に位置しています.カギを握るのはパイロクロア格子の存在であり、磁気フラストレーションに起因した様々な物性の舞台となります.

pn接合:電子を使いこなす第一歩

n型とp型の半導体を組み合わせることで全く新しい機能性が生まれます.その機能の一つがpn接合による整流作用です.電流が行きは進めても戻れなくなるため、交流・直流の変換も可能です.

ナノシート:原子を剥がして創る究極の二次元物質

ナノシートとは、ナノスケールかつシート状の物質を意味します.シート状(板状)であるため、厚さがナノメートル(nm)レベルかつ横方向の長さが厚さの数倍から数千倍の大きさを持ちます.ナノシートは究極の二次元材料であり、三次元材料とは大きく異なる…

マンガンは超伝導と相性が悪い?:超伝導を起こす金属と起こさない金属の違いは何か

マンガン(Mn).第四周期の遷移金属であり、マンガン電池や二酸化マンガン(触媒材料)で有名な元素です.周期表前後の元素を含む化合物では超伝導体が知られているにも関わらず、マンガンが電子伝導を担う物質で常圧で超伝導を示す物質は知られていません.

二次元材料:原子一層分、究極の薄さをもつ材料たち

今世紀の偉大な発明として、ナノテクノロジー、情報技術、バイオテクノロジーなどが挙げられます.ナノテクノロジーの中でも2次元ナノ材料は、基礎的にも応用的にも大きな注目を集めています.二次元材料には有機物、生物由来、金属、セラミックスなどの種…

ヒューム-ロザリーの法則:合金が形成するためのルール

金属元素の組み合わせによって「混ざり合うもの」と「混ざり合わないもの」が存在します.William Hume-Rotheryは過去の膨大な実験データを整理し、固溶体が形成するための要因を見出しました.この規則は今日、Hume-Rothery則と呼ばれます.

逆ペロブスカイト(アンチペロブスカイト):カチオンとアニオンが入れ替わったペロブスカイト

ABX3 の組成でA,Bがカチオン、Xがアニオンを担当するのがペロブスカイトなわけですが、逆ペロブスカイトではその役割が入れ替わります.すなわち、Na3OClのように、Xにカチオン種、A,Bにアニオン種が入ります.ペロブスカイトが多様な機能を示すことから予想…

論文の著者の順番にはどんな意味がある?

論文を書く際には、著者の名前を貢献度に応じて並べることが慣例です.著者の順番を見れば、どの人がどの程度の貢献をしたのかがある程度分かるようになっています.昇進・出世の際には論文数と貢献度が評価の対象となるため、研究者にとって著者の順番は非…

窒化鉄:最強と謳われた幻の磁石

窒化鉄はあらゆる磁石の中で最大の磁力を示し、しかも非常に安価かつ資源的に豊富な鉄と窒素のみから構成されます.しかし、1972年の初報以来、実験の再現性に問題を抱えており、一時は幻の磁石と考えられていました.

食塩水の電気分解:現代文明に欠かせない塩素の作成法

食塩水の電気分解からは、主に塩素ガス(Cl2)と水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液(苛性ソーダ)が得られます.化学工業で必須で汎用的な試薬であり、医薬品、洗剤、殺菌剤、除草剤などに使用されます.

ルチル構造:「赤」を意味する結晶構造

ルチルとは二酸化チタン(TiO2)からなる酸化物鉱物の一種です.ルチルの結晶構造をルチル構造と呼び、AB2の組成を持つ二元系物質でよく見られます.

二酸化チタン(TiO2):原点にして頂点の光触媒材料

1972年、酸化チタンと白金からなるセルに紫外光を照射すると、水が水素と酸素に分解される現象が報告されました.光触媒の仲間が増えてなお、TiO2は光触媒の代表として君臨しています.安価、安定、無毒であり、産業的に利用する上でのメリットが大きいです.

強磁性体:磁石になる物質とならない物質の違い

強磁性体は磁場に引き付けられ、磁石を引き付けるような性質を持つ物質です.しかし、鉄釘は強磁性体の一種であり磁石に引き付けられますが、鉄釘が鉄釘を引き付けることはありません.とすれば、強磁性体とは一体何なのでしょうか.

水素吸蔵合金:水素を貯める仕組みと利用法

水素吸蔵合金は、その名の通り水素の吸蔵が可能な合金材料であり、輸送・貯蔵の簡易さから注目を集めています.材料によっては、自身の体積の1000倍もの水素を吸うことができます.

“Absence of superconductivity”の一覧:なぜ超伝導が出ないことが面白いのか

新しい超伝導体の報告は喜ばしいものであり、多くの物理学者の関心を引きます.しかし、中には“Absence of superconductivity in …”と、超伝導が出ないことが題名で主張している論文があります.超伝導が出ないことの何が面白いのでしょう.「超伝導が出ない…

ペロブスカイト太陽電池:新世代の太陽電池は何が画期的なのか

ペロブスカイト太陽電池は2010年代から研究が活発化している、全く新しいタイプの太陽電池です.低温・塗布で作成可能にも関わらず変換効率が高く、新時代の太陽電池と目されています.世界中で基礎・応用問わず研究の一大ムーブメントが起きており、連日数…

色素増感太陽電池:化学と物理をつなぐ湿式太陽電池

シリコン太陽電池に代わる太陽電池を目指して、開発研究が進められています.色素増感型太陽電池は、シリコン太陽電池とは大きく異なる発電メカニズムに基づきます.化学反応を利用し、安価・簡便な製造が可能ですが、安定性や発電効率にはまだ課題が残され…