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Nature Communicationsの掲載料の推移を振り返る

学術誌と掲載料の問題

学術誌にも格というものがあります.

特にインパクトファクターが大きい学術誌に自身の研究内容を掲載することは研究者にとって一つのステータスであり、世界中の研究者がNatureやScienceといった超一流誌の紙面枠を争っています.こうした有名誌に研究結果を載せたいのは、学術誌の格のお墨付きを得たいというわけではなく、多くの人に自身の研究成果を知ってほしいという思いがあります(知らんけど).

しかし、こうした学術誌は誰でも読めるわけではありません.商業誌である以上は有料のコンテンツです.普通に購入するとかなり高額なので、通常は大学の図書館や研究施設など限られた場所でしか読むことができません.こうなるとせっかく研究成果を出しても、多くの人には読んでもらえないわけです.

こうした状況への対応策として、オープンアクセス誌が生まれました.これは契約しなくても誰もが無料で読むことのできる夢のような学術誌です.その有用さ・便利さから、昨今ではオープンアクセス誌が急速に普及しています.

Nature Communications

こうしたオープンアクセス誌の中でとりわけ知名度のある雑誌がNature系列のNature Communicationsです.掲載にこぎつけるのは難しく、掲載が決定した際には高額の掲載料が支払われます.

もちろん、著者から出版社にです.著者からお金を取るというビジネスモデルなので当然です.

著者が掲載料を支払うことで論文が掲載されます.こうした掲載料は研究費を圧迫しており、できる限り安い掲載料でやりくりをしたいのが本音でしょう.

では、いつNature Communicationsに掲載すれば安い負担で済んだでしょうか.これからもっと安く掲載できるときは来るでしょうか.Nature Communicationsの掲載料の推移と為替の影を調べ、サブミットに適切なタイミングを見極めます.

Nature Communicationsの掲載料

Nature Communicationsの現在の掲載料は$6790です.本記事執筆時点のドル円為替では、掲載料は100万円近くします.論文を掲載するだけでどうしてこんなにお金を払わなければならないのでしょう.悔しいです.

Nature Communicationsは2010年にスタートした学術誌ですが、当初はオープンアクセス誌ではありませんでした.2014年にオープンアクセス誌への転換が発表され、当時の掲載料は$5200でした.あれ、なんか安いですね.

それから何度か掲載料の値上げが行われ、以下のように推移していきます.

Year Value ($)
2014 5,200
2020 5,380
2022 5,890
2023 6,290
2024 6,790
2025 6,990

最近の値上げエグいな.特にここ数年は毎年値上がりしています.なんと、この10年間で3割も値上げしてしまいました.まあ世界ではインフレが進んでますからね.値上げがあるのは当然と言えば当然でしょう(なんかインフレ率と関係なく値上げしているような気がしないこともないけど).

しかし、忘れてはならないのは、ここは日本であって掲載料はドル(ユーロでも払えるよ)であるため、為替の影響を受けることです.掲載料が上がっても、それに負けないペースで為替が動けば掲載料はむしろ安くなる可能性もあります.では、当時の為替はどうであったのかを振り返っていきます.

こうして見ると、2021年以降に急速に円安方向に振れていますね.そうなると掲載料は日本円ベースで上昇していきます.値上げ+円安で家計(研究予算)は火の車.しかし、まだ分かりません.掲載料とドル円を合わせ、掲載料は日本円でいくらであったのか推移を見ていきましょう.

掲載料が値上がりしているのは分かっていましたが、こうして見ると圧巻です.

ずっと掲載料は60万円前後で横ばいでしたが、2022年に一気に上昇し80万円を突破しました.2024年には大台である100万円を超えました.直近も円高に回帰したとは言い難く、掲載料の上昇には歯止めが掛かりそうにもありません.

掲載料の値上げ+円安のダブルショックにより、ここ数年で掲載料は爆上がりしています.掲載誌側が値下げをすることは無いでしょう.そうなると、円高にかけるしかないですが、今のところは望み薄です.

いつNature Communicationsに投稿すればいいかと問われれば、その答えは「今すぐ」です.貴重なお金を大事にしましょう.

(余談)Science Advancesの掲載料

ついでに、Natureに伍する学術誌であるScienceの関連オープンアクセス誌、Science Advancesについても見ていきましょう.2019年にスタートした比較的新しめの学術誌です.こちらは当初からオープンアクセスであることが謳われていました.

掲載料は以下のように推移しています.

Year Value ($)
2015 3,000
2019 4,500
2024 4,950
2025 5,450

うーん、やっぱり高い.Nature Communicationsを見た後だと良心的に見せかけて、一回の値上げ幅がえげつない.2019年には1.5倍ですよ、1.5倍.何があったんでしょう.そのうち、Nature Communicationsを追い越すかも・・・