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アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン:周期表の族の様々な呼び名

更新 2024-3-5

周期表と元素

Element

世の中の物質の種類がとても数え切れないことを考えれば、元素の数も無数にありそうですが、実際はせいぜい100種類程度の元素しか存在していません.身近で見つかる元素に限れば40種類程度です.このわずかな種類の元素によってこれほどまでに多様な物質が形作られているのです.

これまでに発見された元素は周期表にまとめられています.周期表は、横に18列、縦に7行のブロックで分けられており、周期表の横に並ぶ列を「」、縦に並ぶ行を「周期」と呼びます.

元素の化学的・物理的性質は原子番号が大きくなるに連れ、一定の周期性で変化します.これが周期律です.

この周期律を反映し、周期表の縦一列にある元素はどれも似通った性質を示します.例えば、周期表の左端にある一連の金属元素は「アルカリ金属」と呼ばれ、1価の陽イオンになりやすく、極めて反応性が高いという点で一致しています.

「アルカリ金属」のほかにも「アルカリ土類金属」、「ハロゲン」など、特定の族を示す呼び名は多くあり、同一の族に属する元素群はいずれも似たような性質を示します.

今回は、周期表における様々な「族」とその特長を見ていきます.

アルカリ金属(Alkaline metal, Hを除く1族元素)

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1族に属する元素は、水素(\rm{H})、 リチウム(\rm{Li})、 ナトリウム(\rm{Na})、 カリウム(\rm{K})、 ルビジウム(\rm{Rb})、 セシウム(\rm{Cs})、 フランシウム(\rm{Fr})です.

1族元素のうち、\rm{H}を除いた金属をまとめて「アルカリ金属」と呼びます.\rm{H}は常温常圧で気体であるため、アルカリ「金属」からは除かれます.

アルカリ金属は、いずれも光沢があり、柔らかく、融点・沸点の低い金属です.イオン化エネルギーが小さく、1価の陽イオンになりやすいという性質があり、化合物としてはイオン結合性の物質が大多数を占めます.

空気や水と激しく反応するため、油の中に保存します.自然界で単体として生成することはなく、酸化物や塩化物として得られます.

反応性が高すぎることが災いして非常に扱いにくいです.空気中で扱うことはできず、不活性雰囲気のボックス内で操作します.

アルカリ土類金属(Alkaline earth metal, 2族元素)

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2族に属する元素はベリリウム(\rm{Be})、マグネシウム(\rm{Mg})、カルシウム(\rm{Ca})、ストロンチウム(\rm{Sr})、バリウム(\rm{Ba})、ラジウム(\rm{Ra})です.

これら2族元素をまとめて「アルカリ土類金属」と呼びます.

アルカリ土類金属は、いずれも2価の陽イオンになりやすい金属元素です.アルカリ金属ほどではないですが水や空気と高い反応性を示し、融点・沸点は比較的低めです.

\rm{Ca}以降の元素は非常に似通った性質を示すものの、\rm{Be}\rm{Mg}については共有結合的な振る舞いが見られるなど、やや異なる傾向です.

アルカリ土類の「土類」とはその名の通り土を意味し、地球から産出するこれらの元素の酸化物に由来します.これらの酸化物は水に溶けるとアルカリ性になります.

スカンジウム族元素(Scandium group, 3族元素)

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3族に属する元素はスカンジウム(\rm{Sc})、イットリウム(\rm{Y})、ルテチウム(\rm{Lu})、ローレンシウム(\rm{Lr})です.

公式にはこれらの総称は定められていませんが、スカンジウム属と呼ばれる場合があります.また、\rm{Sc}, \rm{Y}およびランタノイド(\rm{La-Lu})をあわせて希土類(レアアース)と呼びます.

スカンジウム属元素はいずれも金属で、3価の陽イオンになりやすい性質を持ちます.単体はやや軟らかく、空気や水と反応しますが、表面での酸化膜の形成によって反応が内部までは進行しません.

過去には、ランタン(\rm{La})とアクチニウム(\rm{Ac})が同族に含まれることがありましたが、現在ではそのような見方は否定されているようです.

4-12族元素

これらの属に属する元素は大部分が遷移金属ですが、族の名前は特に決まっていません.場合によっては、族の一番上にある金属の名前を取り、鉄族元素クロム族元素のように呼ばれることがあるようです.

ホウ素族元素(Boron group, 13族元素)

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13族に属する元素はホウ素(\rm{B})、アルミニウム(\rm{Al})、ガリウム(\rm{Ga})、インジウム(\rm{In})、タリウム(\rm{Tl})です.

日本語では決まった呼び方がされているところをあまり見かけませんが、英語圏ではBoron groupあるいはTriel(トリエル)と呼ばれる場合があります.

ホウ素は金属と非金属の中間の性質を持つ(メタロイド)とされていますが、他のホウ素族元素は金属として振る舞います.化学的性質を眺めてみても、\rm{B}だけが他のメンバーとは一風異なった性質を示します.イオンとなる際は、いずれも3価の陽イオンとなる傾向があります.

歴史的には、いくつもの呼び名が考案されたグループでもあります.ヨーロッパではIIIB族、アメリカではIIIA族と呼ばれたほか、アースメタルあるいはトリエルという総称もあります.

炭素族元素(Carbon group, Tetrel, 14族元素)

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14族に属する元素は炭素(\rm{C})、ケイ素(\rm{Si})、ゲルマニウム(\rm{Ge})、スズ(\rm{Sn})、鉛(\rm{Pb})です.

半導体分野では、IV族元素という呼び名がされる場合があります.また、英語圏ではギリシャ語で4を意味する後に由来するTetrel(テトレル)と呼ばれますが、これは価電子を4つ持つことに由来します.

炭素は4つの結合の手を持ち、別の\rm{C}\rm{O}と共有結合を繰り返すことで多種多様な有機物を形成しますが、周期表の下に行くほどこのような性質は鳴りを潜めます.

重い元素ほど共有結合が弱くなることを反映し、融点も\rm{C}がもっと高く\rm{Pb}で低くなります.イオン結合性の物質を形成する際は、2価または4価の陽イオンとなる傾向があります.

ニクトゲン(Pnictogen, 15族元素)

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15族に属する元素は窒素(\rm{N})、リン(\rm{P})、ヒ素(\rm{As})、アンチモン(\rm{Sb})、ビスマス(\rm{Bi})です.

ニクトゲン(Pnictogen)という名は、「窒息する」を意味する古代ギリシア語に由来します.窒素ガスを吸うと窒息することから派生したようです.VA群あるいはVB群とも呼ばれるほか、半導体分野ではV元素とも呼ばれます.

ニクトゲンは5つの価電子を持ちます.陽イオンとなる際は、3価あるいは5価をとります.一方、アニオンとして振る舞う場合もあり、その際は3価の陰イオンとなります.

ニクトゲン元素が陰イオンとして振る舞うような物質をニクタイド(Pnictide)と呼びます.

カルコゲン(Chalcogen, 16族元素)

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16族に属する元素は酸素(\rm{O})、硫黄(\rm{S})、セレン(\rm{Se})、テルル(\rm{Te})、ポロニウム(\rm{Po})です.

\rm{O}は常温で気体であるなど、他のカルコゲンと性質が大きく異なるため、しばしばカルコゲンから除外されます.カルコゲン(Chalcogen)の名は、主に「銅」を意味するギリシャ語と「生まれた、作られた」を意味するラテン語の組み合わせに由来します.

カルコゲンは6つの価電子を持ちます.陽イオンとなる際は、2価、4価あるいは6価をとります.酸素を思い浮かべればわかるように、陰イオンとして振る舞う場合もあり、その際は2価の陰イオンとなります.

カルコゲン元素が陰イオンとして振る舞うような物質をカルコゲナイド(Chalcogenide)と呼びます.

ハロゲン(Halogen, 17族元素)

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17族に属する元素はフッ素(\rm{F})、塩素(\rm{Cl})、臭素(\rm{Br})、ヨウ素(\rm{I})、アスタチン(\rm{At})です.

常温常圧で\rm{F}\rm{Cl}は気体、\rm{Br}は液体、\rm{I}\rm{At}は固体であるなど、周期によって大きく異なる性質を示します.ハロゲンの名は「塩を作るもの」という意味であり、一般的なハロゲン化物が金属元素と塩を形成することに由来します.

ハロゲンは7つの価電子を持ちます.2つの原子が対となることで、結晶よりも分子になりやすい傾向があります.電気陰性度が高く、陰イオンになる場合が多いですが、陽イオンとなる場合もあります.陰イオンとして振る舞う場合は1価をとり.

ハロゲン元素が陰イオンとして振る舞うような物質はハライド(Halide)と呼ばれます.

貴ガス(Noble gas, 18族元素)

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18族に属する元素はヘリウム(\rm{He})、ネオン(\rm{Ne})、アルゴン(\rm{Ar})、クリプトン(\rm{Kr})、キセノン(\rm{Xe})、ラドン(\rm{Rn})です.

いずれも常温常圧で無色透明無臭の気体であり、反応性に乏しいです.それゆえ、不活性であることが好ましい条件を実現するために使用されます.

貴ガスは単原子分子であり、化合物を形成することは通常無いですが、重い貴ガスは価電子を手放して化合物となったり(\rm{XeF_2}など)、\rm{He}であっても超高圧下では化合物を形成する場合があります.